【メッセージ】バッハコンクール課題曲について:池川礼子(バッハコンクール実行委員 鹿児島地区代表)
2013年11月9日土曜日○現場の先生方の意見を反映した課題曲選び
日本バッハコンクールでは、第3回の開催時より、課題曲の選定については南から順番に地区大会実施事務局が決めるということになりました。今回の課題曲選びは責任重大、身の引き締まる感じでした。
課題曲を決めるにあたって最も大事なのは、現場でレッスンをしていらっしゃる先生方のご意見だと思います。ですので今回の選定にあたっては、実際のレッスン現場に日々立たれているバスティン研究会の15名程の先生方にご協力を頂きました。
小学1・2年生までと、それ以上というグループに分け、候補曲を挙げてもらうのに2回、選曲に入ってから3・4回ほど会合を行い、課題曲を決定しました。
○何を重視して選曲したのか?
日本バッハコンクール実行委員長の石井なをみ先生からは、「AコースとBコースの差をはっきりつけて欲しい」「バッハの曲をなるべく入れて欲しい」、というリクエストをいただきました。以上を踏まえて、小さい生徒さんの学年には、よりポリフォニックで両手とも歌えるような曲を選定いたしました。ここには、ポリフォニーの曲をなるべく早くから勉強して欲しいという意図があります。
幼児レベルの曲でポリフォニーの勉強に適した曲は非常に少ないので、選定はとても難しかったのですが、その中でも生徒さんが取り掛かりやすいように、タイトルが有りイメージの生まれやすい曲にこだわって選曲しました。
どの学年も、ポリフォニー的でメロディーの美しいものを選んだつもりです。
○ポリフォニーを学ぶ練習のヒントとして
両手とも、充分歌う気持ちを持って練習をして頂きたいと思います。実際、声に出して歌ってみたりして、それをピアノの音で再現するような練習もして欲しいと思います。
ポリフォニーの曲は「旋律と伴奏」という形ではありません。伴奏と言う形が無いということは、音が少ないということですので、聞き取りがし易いということになります。弾いている本人も自分の音を良く聴いて、「きれいな響きの音」で「表情のあるメロディーが聞こえているか」を注意しながら練習をすると、指先もしっかりして、コントロールできる指先作りに繋がります。
また、「歌」というのは音をつなげるということです。レガートが上手にならないと美しい「歌」は表現できません。ピアノで難しいレガートについても、しっかり取り組んで欲しいですね。(※)
中高校生以上の方には、日々学んでいるインベンション・シンフォニア・平均律はもちろんのこと、舞曲に数曲取り組むなど、新しく視野を広げる機会にして頂きたいと思います。
※池川礼子著『100のレッスンポイント』(音楽之友社)
特に05「指先の意識」、14「レガートは歩くことと同じ。自然に歩こう」などを参照
○バッハコンクールを利用して、基礎力アップを!
いま、日本ではピアノのコンクールは多数ありますが、バッハコンクールを活用することで、名曲を弾くための基礎力がアップすると思います。
特にポリフォニーの特徴から考えると
�� 歌う
�� 両手とも独立したメロディーとして表現する
そのために
�� 良く音を聴く
�� フレーズなどに注意を払う
�� 美しい音を目指す
というテクニック・音作り・表現・練習の各ポイントが磨けると期待できます。
皆さんは、恐らく日頃からバッハのインヴェンションなどを勉強されているでしょうし、日々の練習の中でポリフォニーの曲を学んでいると思います。その延長線上で気軽にトライできるのがバッハコンクールです。バッハコンクールの日を目標にして仕上げることにより、名曲を弾くための基礎力が効率的にアップするのではないかと思います。
是非、バッハコンクールに御参加頂き、楽しく基礎力をアップしてください!
池川礼子(バッハコンクール実行委員 鹿児島地区代表)
武蔵野音楽大学ピアノ科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。『バスティン・メッソード』の講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクール第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優秀賞などを受賞させる。2010年度には、E級以外のすべての級で決勝進出させるなど、導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ評議員、指導者検定委員会初級チーフ、ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会審査員。全日本学生音楽コンクール他、多くのコンクールで審査員を務める。
○最新著書
100のレッスンポイント-名曲が弾けるまでのヒントとして(音楽之友社)